年末が近づいてくると、ご相談の場で必ずと言っていいほど聞かれる質問があります。
「NISAの枠って、年内に使わないと消えてしまうんですよね? 今年は月3万円しか積み立てていないので、ボーナスで一気に入れたほうがいいですか?」
年末は、ふるさと納税や年末調整での各種控除の手続きなど、お金の締め切りが重なる時期でもあります。その中でもNISAの年間枠は、誤解が多いテーマです。
「枠が消える」?
NISAの年間投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、合わせて360万円です。この枠は毎年1月1日にリセットされ、使わなかった分を翌年に繰り越すことはできません。これが「消える」と言われる理由です。
ただ、これは「使い切らないと損をする」という話ではありません。年間枠はあくまで上限です。また、今年使わなかったからといって、生涯の非課税保有限度額(1,800万円)が減るわけでもありません。長い時間をかけてご家庭のペースで埋めていけば十分です。投資を始めたばかりの方は、特に年末ということを気にせずに、毎月の積み立てを軸にして必要な際に一時金を追加する、というシンプルな考え方で大丈夫です。
本当の締め切りは「注文した日」ではない
意外と知られていないのが、どの年の枠を使うかは、注文日ではなく「受渡日」で決まるという点です。年末年始は市場や金融機関が休みに入るため、12月下旬に注文すると受渡しが翌年にずれ込み、来年の枠を使うことになる場合があります。
一例として、あるネット証券の案内では、2026年分として扱われるのは、国内株式が12月28日(月)の約定分まで、米国株は現地12月24日(木)の約定分までです。投資信託はファンドごとに受渡しまでの日数が違うため、締め切りはさらに早くなります。毎月の積立も、12月分は設定によって来年の枠に入ることがあります。「12月に買ったのに今年の枠ではなかった」という行き違い(勘違い)がよく起こっています。
日程は金融機関ごとに異なりますので、年内の枠を使いたい場合は、早い段階でご利用の金融機関の案内で確認しておくことをおすすめします。
数字で考える、ボーナスの使い道
つみたて投資枠120万円を使い切るには、月10万円が必要です。月3万円なら年間36万円ですから、枠の約3割になります。
たとえばボーナスが40万円出たとします。私がまず確認するのは、投資額ではなく、次の2点です。
- 生活費の半年分程度の預貯金が手元にあるか?
- 来年の入学金や授業料など、数年以内に使う予定のお金に充てる予定がないか?
そのうえでの残額(=余裕資金)が50万円あるなら、その50万円を積立投資枠に回す。それくらいの余裕を持たせる形が良いです。無理に「枠を埋める」必要はなく、来年1月から月の積立額を少し増やす、という選択も、同じくらい良い判断です。
ちなみに、冒頭の質問があった際に、次の様にお伝えしました。「今年は月3万円の積立を続けられているだけで十分です。ボーナスからの投資はまず家計の余裕を確認してから決めましょう。枠は毎年1月に新しく用意されますから、焦る必要はありません」。
「もったいない」が判断を狂わせる
注意したいのは、「枠がもったいない」という気持ちです。損をしたくない心理(損失回避)が働くと、本来は使う予定だったお金まで投資に回してしまいがちです。
投資の元本は保証されておらず、一括で入れた直後に値下がりすることもあります。数年以内に使うお金や生活防衛資金は、運用に回さないのが基本的な考え方です。
年内にやっておきたい3つのこと
- NISA口座の画面で、今年の利用額と残りの枠を確認する
- 年内に使いたい場合は、金融機関の締め切り日を確認する
- 来年の積立額を、家計全体で見直す
3つ目に関連して、来年1月からは18歳未満向けの「こどもNISA」も始まります。年間60万円、累計600万円まで、つみたて投資枠の対象商品を積み立てられる制度です。お子さんのいるご家庭は、教育費の準備と合わせて考える良い機会になります。ただし、ご家庭全体の積立額には限りがありますので、親御さん自身の老後資金とのバランスを見ながら、焦らず慎重に検討することが大事です。
「うちの場合、今年はいくらまでなら無理がないのか」を整理したい方は、お気軽にご連絡ください。ご家庭の状況を伺いながら一緒に考えていきます。
