AI時代のファイナンシャルプランナーの立ち位置

「AIに聞けばいいじゃないですか」と言われた日のこと

先日、久しぶりにお会いしたお客様にこう言われました。

「最近はお金のこと、スマホで調べたらだいたい分かりますよね。AIもかなり進化してきたので、北島さんに相談しなくても良くなっていきますよね?」

冗談めかしておっしゃっていましたが、私は少し考え込んでしまいました。

たしかに、NISAの仕組みも、iDeCoの上限額も、インターネットで調べれば出てきます。AIに質問すれば、私より詳しく、私より速く答えてくれることもありますので、それは事実です。

では、ファイナンシャルプランナーはもう必要なくなったのでしょうか?

これまでの10年間、沢山のお客さまと向き合ってきた経験から、私なりの答えをお伝えしたいと思います。

知っている人だけが使える制度がある

まず、多くの方が見落としていることをお伝えします。

国の公的な支援制度は、充実しています。医療費が高額になったときの制度、子育て中に使える給付、教育にまつわる支援など、調べると「こんなものがあったのか」と皆さんが知らないものも存在しています。

ただし、これらには共通点があります。自分から動かないと、一切受け取れないということです。

窓口から届くものもありますが、全てではありません。
窓口から案内が届かないものもあり、条件を満たしていても申請しなければゼロ。つまり、「知っていること」が前提になっている制度設計です。

「知らなかった」で損をしてきた方を、私はこれまで何人も見てきました。

AIは「聞いた分だけ」答えてくれる

それでは、AIはどうでしょうか?

これは本当に便利です。「NISAとiDeCoの違いを教えて」「40代から始める資産運用は?」と聞けば、きちんとした答えが返ってきます。私自身も情報収集に活用することが良くあります。

ただ、一つ気になることがあります。

AIは、聞かれたことには答えてくれます。でも、あなたが「何を聞けばいいか」は教えてくれません。

「老後が不安」「教育費が心配」という漠然とした気持ちを持ちながら、何を質問すればいいか分からない。そういう状態では、どれだけ優秀なAIがあっても、自分に必要な答えにはたどり着くことは出来ません。

FPとの会話で起きること

私が相談をお受けするとき、最初に話してくださる内容と、話し終えた後に「本当に気になっていたこと」が変わることがよくあります。

「老後のためにNISAを始めようと思って来ました」とおっしゃって来られた方が、1時間ほど話した後に「やっぱり一番不安なのは、子どもの大学費用が重なる5年後のことでした」と気づく。そういう場面が何度もありました。

最初から「大学費用の準備について相談したい」と言えれば、AIでも調べられます。でも、そこにたどり着くまでの「気づき」は、対話の中でしか生まれません。

数字や制度を説明することも大事ですが、私がFP相談で一番大切にしているのは、実はこの部分です。

「正しいプラン」と「納得できるプラン」は違う

もう一つ、10年間の経験で気づいたことがあります。

数字の上で合理的なプランが、その人にとってベストとは限らないということです。

「保険を見直して(減らして)、その分を資産運用に回しましょう」という提案は、計算上は理にかなっていることが多くあります。でも、「いざというときの備えを薄くするのはどうしても怖い」という気持ちや不安がある方に、数字だけで説得しようとしても、うまくいきません。

安心というのは、数字では測れないものです。家族への想い、自分の性格、これまでの経験――様々なことを踏まえた上で、「この方向なら納得できる。続けることができる。」と思ってもらえるライフプランを一緒に考えて作ること。それが、私が考えるFPのミッションだと思っています。

皆さんが考えていること、安心に思うこと、不安に思うことは千差万別です。40代で小中学生のお子さんがいらっしゃるご家庭でしたら、「教育費の計画」と「老後資金の計画」と「今の生活を楽しむこと」のバランスがメインテーマになることが良くあります。

「何から始めればいいか分からない」「なんとなく不安だけど、何が不安なのかもはっきりしない」

そういう段階でのご相談が、実は一番意味があると感じています。答えを持って来なくても大丈夫です。漠然とした不安のままでも大丈夫です。

一緒に、あなたが本当に気にしていることを見つけるところから始めましょう。

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